サンケン技報


サンケン技報は、省エネルギー社会を支えるサンケングループの最新技術や製品を紹介する技術論文です。
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2023年11月号(vol.55)

No. 論文 著者
1 技術開発部門技術力向上の取り組み “NEXUSスクール” 福田 光伸
近年、カーボンニュートラル志向の高まりを背景に、クルマや産業機器の電動化拡大、家電のさらなる省エネルギー化が加速しており、パワー半導体デバイスの活躍の場がますます拡大している。もとよりデバイス製品での社会貢献を目的とした当社には、より幅広い用途での効率改善、小型化など、様々なニーズ、要求にこたえてゆくことが求められている。こうした状況下で、技術開発力、提案力のさらなる向上が必須であり、技術力向上の視点で社内教育体系を見直し、2023年度より「NEXUSスクール」を立ち上げた。本稿ではその狙い・コンセプト、概要について紹介する。
2 三相BLDCモータ制御内蔵SIM262xMシリーズの製品開発 西嶋 哲也
業務用エアコン等に使用される中容量の高圧三相BLDCモータが、モータ構造をIPMモータに変更し小型で高効率になっている。 これにともない、モータ制御機能の変更が容易な制御入りモータ制御ICの要求が高まっている。市場の要求に対応するためには、モータの極数を8極から10極への置換えや過電圧保護検出の対応、回転方向指令の切替えなどの機能を備える必要がある。従来品からの設 計変更により、市場のターゲットコストを実現できるセンサー付き正弦波変調方式を搭載したモータ制御ICを開発した。
3 第一世代 RC-IGBT の開発 染矢 亮
地球環境保護という社会課題を背景に日増しに高まるパワーデバイスへの関心にともない、高性能化や小型化などを目的とした研究開 発が盛んにおこなわれている。これらの課題に応えるデバイスの一つとして、RC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)がある。RC-IGBTは、従来2チップであったIGBTとDiode を1チップに作り込んだデバイスで、外周構造を共用できるため、同じ活性部面積でも小型化 が可能である。今回、当社旧世代RC-IGBTに比べ、大幅に特性改善した第一世代RC-IGBTを開発した。第一世代RC-IGBTの開発に当たり、Diode配置による放熱性やスナップバック現象についてシミュレーションを用いて設計検証した事例や、実際のチップ特性について代 表例を紹介する。
4 IPM向け低コスト高耐圧BCDプロセスの開発 青木 宏憲
民生機器から産業機器、車載用途まで幅広く使用されるIPM(Intelligent Power Module)は当社の主力製品である。IPM製品に内蔵されるモータドライバIC(HVIC)向けに、低コストの高耐圧BCDプロセス、SG7.5HVプロセスを開発した。このプロセスは、当社の0.25umデザインルールにもとづく900V第7世代BCDプロセス(SG7HVプロセス)をベースにしており、プロセス面およびデバイス面の詳細な見直しを経ている。本稿ではその開発手法について報告する。
5 ICウェーハテストデータの活用 岡田 光太郎
佐藤 忠充
寺田 一輝
ウェーハテストの主目的は良品選別であり、長年テスト時間(生産性)が重視されてきた。そのため量産時の測定結果はデータ容量の制限から限られたデータのみが保存されており、チップごとの測定結果は保存されずウェーハテスト後のデータ解析には限界があった。
近年の情報技術の発展により大規模なデータ処理が可能となった事から、ウェーハテスト時に全チップ全測定項目のデータ保存が可能となった。これにより測定データを有効に扱うことができ、問題発生時の要因きりわけ、原因調査の工数削減、前工程へのフィード バックの迅速化が可能となった。本稿では実際のウェーハテストのデータ解析と活用事例に関する報告をおこなう。
6 これからのクルマを実現する技術 野澤 拓矢
砂部 翔
自動車産業においてCO2排出量削減は全世界的な課題として注目が集まっているが、同時に高齢者による事故増加や交通渋滞、人手不足などの社会的課題解決に向け、安全性能向上や自動運転に向けた取り組みが過熱し、100年に1度のパラダイムシフトと言える産業構造の変化が起こっている。今回、自動車の電動化、自動運転、E/Eアーキテクチャ、車室内デザインに関してトレンドをまとめ、その大きな市場変化を支える半導体デバイス、モジュール、LEDに関する技術動向と市場変化に向けたサンケン電気の取り組みについて紹介する。
7 車載用フライバックコンバータコントロールIC YH2102/YH2103の開発 鈴木 建
内燃機関の車両の電気系統は鉛蓄電池12Vを利用した低電圧電源が利用されている一方で、近年増加しているxEV車両においてはモータ駆動用に数百Vの高電圧バッテリも搭載している。モータ駆動用制御回路は、低電圧電源から絶縁トランスを介して電力供給されるのが一般的であるが、一部車両では高電圧バッテリから制御回路に電力供給する補助電源としての需要がある。高電圧バッテリはさらなる高電圧化へと進んでおり、補助電源の高耐圧化は必須となる。
今回、こうした市場要求に応えるため、高電圧入力に対応した車載用フライバックコンバータコントロールIC 『YH2102/YH2103』を開発した。
8 車載メインインバータ用 BlueIGBT 7の開発 松田 成修
パワー半導体デバイスは、大きな電流や電力の制御、変換、供給をおこなうためのスイッチング素子である。これらは自動車・白 物家電・産業機器など幅広い分野で使用され、省電力化・高効率化において大きな役割を果たしている。自動車関連分野においては、 xEVの市場拡大にともない、多数のパワー半導体デバイスの需要が予想される。今回の開発ターゲットとしている車載メインインバー タ用スイッチング素子では、高耐圧・低損失・高耐量が強く要求されるため、当社ではBlueIGBT 7と称したFS-IGBT (Field stop - Insulated Gate Bipolar Transistor) のプロセス開発をおこなった。本稿では、その開発検討状況について報告する。
9 CRM PFC + LLCコンボコントローラIC SSC4S910シリーズの開発 伊藤 公一
姜 韓柱
菅原 岳樹
大型液晶テレビ、モニタ、LED照明、多機能プリンタなどの大電力用途へ向けたスイッチング電源は、主に力率改善回路(PFC)と LLC電流共振回路(LLC)で構成される。これらのアプリケーションでは、IoT対応、USB給電といった高機能化の要求による電源の大 電力化が進む一方で、電源ボード全体の低コスト化やスタンバイ特性の改善が重要な課題となっている。今回、PFC制御部とLLC制御 部を1パッケージに統合し、端子共通化とICへの機能取り込みをおこなうことで、高い連携性と大幅な部品点数削減を実現したPFC+ LLCコンボコントローラIC SSC4S910シリーズを開発したので報告する。
10 スマートファクトリーの実現 小野 治
近年激しく変化するビジネス環境においても企業競争力の維持・獲得・強化を果たすために、当社が取り組んでいるDX(Digital Transformation)推進の最重要項目として生産工場のスマートファクトリーがある。従来から生産ラインの画像化および自動化や工程改善等で工数削減や品質改善などをおこなってきたが、新たにIoT (Internet of Things) 技術を活用し、様々なシステムと情報連携することで、生産ラインのさらなる生産性向上や業務効率向上などに寄与する取り組みがおこなわれている。
本稿では、当社で実施している生産工場のスマートファクトリーの概要およびスマートファクトリーを推進していく上での全9ステップの活動内容および取り組み状況と今後の展開について報告する。
11 石川サンケン堀松工場B棟におけるトレーサビリティシステム導入 新島 徹也
近年激しく変化するビジネス環境においても企業競争力の維持・獲得・強化を果たすために、当社が取り組んでいるDX(Digital Transformation)推進の最重要項目として生産工場のスマートファクトリーがある。従来から生産ラインの画像化および自動化や工程改 善等で工数削減や品質改善などをおこなってきたが、新たにIoT (Internet of Things) 技術を活用し、様々なシステムと情報連携するこ とで、生産ラインのさらなる生産性向上や業務効率向上などに寄与する取り組みがおこなわれている。
本稿では、当社で実施している生産工場のスマートファクトリー推進活動における石川サンケン堀松工場B棟モデルラインに導入し たトレーサビリティシステムの概要と成果および今後の展開について述べる。
12 ものづくり開発センター棟ライン立上げ 境 春彦
省エネルギーを背景にパワー半導体市場が活況の中、タイムリーな新製品のリリースのため、開発から安定生産までの期間短縮が 求められている。リソースを集中させ開発効率を向上させるため、開発機能別に拠点化を進めた。開発機能の一つである新パッケージ および革新ライン開発の拠点は、ものづくり開発センターに集約した。また、デジタルトランスフォーメーションの時代に対応したデ ジタル技術を駆使した高効率生産ライン、スマートファクトリー化を強力に推進するための機能も集約した。我々は、新パッケージ SAM2、SIM2を用いたモータドライバIC製品をリリースした。特にSIM2は、従来の生産工場パイロットライン導入および量産ライン 化する方法を一新し、ものづくり開発センターにて立上げ、量産条件出しをおこなう方法で、高い品質を備えた製品としてリリースを おこない、開発期間の短縮を実現した。
13 山形サンケン 瞬低対策工事施工事例について 大滝 卓也
昨今、半導体装置の高度化、精密化にともない電源電圧の変動に対して脆弱化していることから、瞬低(瞬時電圧低下)による損害 が件数、金額ともに増加している。山形サンケンでも瞬低対策を行っているが過去10年で136[件]の瞬低が発生し、37件で損害が発 生している為、生産ラインに大きな影響を与えていた。今回、山形サンケンにおける瞬低対策の課題を分析することで、新たに瞬低補 償装置を導入した為、その性能や施工事例を報告する。

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