サンケン技報


サンケン技報は、省エネルギー社会を支えるサンケングループの最新技術や製品を紹介する技術論文です。
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2020年11月号(vol.52)

No. 論文 著者
1 800V-SiC-MOSFETの開発 韋 寧
馬場 良平
熊倉 弘道
SiCウェーハの大口径化によってコストが徐々に下がってきている。 Siパワーデバイスより高速動作や高温動作が可能であるSiCパワーデバイスは、小型電源やインバータなどの部品点数を削減して小型化、軽量化および大電力化に 大きく寄与することが期待される。今回、中耐圧領域のスイッチング電源やモータインバータに向けた800V SiC MOSFETを開発するにあたり、 先行開発している1200V開発品のコンセプトを踏襲しながらデバイスシミュレーションによって素子設計を検討した。 Siデバイスの一つであるSuper JunctionMOSFETと比較し、スイッチング損失に対して優位性を確認したので報告する。
2 SiC-MOSFETを用いたモジュール製品の検討 佐藤 嘉洋
横川 浩史
エコ・省エネの志向が益々強くなっている。市場では、再生可能エネルギーを利用するインバータやモータなどの電気機器が急増している。 これらシステムでは、高効率・低損失に寄与する半導体デバイス製品を強く求めている。 この要求に対して、我々は化合物半導体であるSiC-MOSFETの開発に取り組み、高電圧化、大電流化、 高周波化の要求を満足するパワーデバイス製品を市場へ拡販する活動を進めている。 今回SiC-MOSFETをモジュールパッケージに搭載する試作を実施し、その試作品の評価結果を得たので報告する。
3 1200V FS-IGBT の開発 石井 孝明
近年、地球規模での環境保護対策や持続可能な社会を実現するために、エネルギーを効率的に利用し 省エネルギー化に貢献できるパワーエレクトロニクス技術への要求がますます高まっている。 当社では、産業、民生、自動車など幅広い分野で用いられるパワー半導体デバイスとして、600VクラスのIGBTを製品化し市場へ提供し続けている。 また一方で高耐圧かつ低損失、様々なアプリケーションへの市場要求に応えるべく、1200VクラスのIGBT開発を進めている。 1200V FS-IGBT開発ではトレンチゲート構造による高電流密度化、薄厚ウェーハ加工技術による低損失化、MOS構造の最適化による短絡耐量の確保について検討をおこない、 薄厚化プロセスを確立し製品要求を満たす特性を実現した。
4 モータドライバIC SCM1200MAシリーズの開発 小倉 康平
世良 穂高
近年、白物家電市場では省エネ規制が強化され、特に中国エアコン市場ではインバータ化が加速している。 エアコンのコンプレッサ駆動向けIPM (Intelligent Power Module) のうち、15A定格製品はルームエアコン用途であり最も市場規模が大きい領域である。 当社ではSCM1200MFシリーズ製品をおよそ10年前に市場投入し数多く販売している。 SCM1200MFシリーズは多くの市場実績がある一方、製品仕様としては過剰スペックの部分もあり、市場ニーズに合った仕様への刷新をおこなった。 今回開発したSCM1200MAシリーズは、従来製品の製品仕様を見直した上で温度モニタ機能の高精度化を図るとともに、 従来製品とピンコンパチブルとし、基板の設計変更を不要とする等、使い易さにこだわり開発したので報告する。
5 白物家電用モータドライバIC SIM6897Mの開発 前川 祐也
大滝 健嗣
近年、白物家電製品に搭載されるモータドライバICに対しては、基板サイズの小型化要求にともなうパッケージの小型化、 電源事情が悪い地域での破壊防止のための高耐圧化、そしてより一層の省エネを実現するための低損失化の要求がある。 これら要求を背景にSIM6897Mでは高電流密度化したフィールドストップIGBT(FS-IGBT)を採用することでチップサイズをシュリンクし、 小型SIMパッケージで10A定格化を実現している。あわせて高耐圧化および低損失化を実現し、市場要求に応えている。 また、FS-IGBTを駆動するためのMIC(Monolithic Integrated Circuit)には最新の微細化プロセスを使用することで、 チップサイズをシュリンクするとともに、温度モニタ機能を搭載する等の保護機能強化をおこない、市場での破壊リスク低減を図っている。
6 進角パラメータ抽出ボードの開発 鈴木 未生
李 家豪
砂川 千秋
エアコンファンモータを代表とする小型三相ブラシレスモータに対して、高効率駆動が可能なモータドライバICが求められている。 疑似正弦波制御においては、進角制御の設計に時間を要する。当社は最適な進角パラメータを容易に抽出可能なボードを開発した。 このボードは、当社製のマイコンMD6602を使用して、モータドライバIC SX6812xMの入出力値を制御・測定・演算する構成となっている。 これにより、従来と比べて開発・設計に要する時間を90%削減することに成功した。 今後はユーザの開発工数の削減提案を含めた高効率モータドライバICの提供を図っていく。 ここでは進角パラメータの抽出の手法について報告する。
7 車載・産業機器に対応した50AクラスIPMの開発 今井 能孝
浅見 亮範
大瀧 康幸
内藤 裕也
朴 昶瑩
近年、自動車、産業機器市場では高電圧大電流モータドライバの需要が高まっている。 今回、最大電圧1200V、最大電流50Aに対応し、IGBT、Diode、ゲートドライバICなど必要な部品を一つのパッケージに搭載したIPM SAM2シリーズを開発した。 前モデルであるSAE6500シリーズよりパッケージサイズを30%縮小、絶縁距離確保、各品質要求へ対応した。 サンケン電気独自のプラットフォーム開発プログラムであるSPP(Sanken Power-electronics Platform)を適用することで、 開発効率向上を図り、同パッケージで複数の製品展開を実現した。
8 低VFダイオードSG-17VLEJの開発 西村 保弘
髙橋 直久
車載向けオルタネータ用ダイオードのVF低減要求に対応するため、JBS構造のダイオード素子を開発した。 VF特性はショットキーバリア構造で低減をおこなった。ただしショットキーバリア構造はPNダイオードよりもIRが増加し、サージ耐量は低下する。 オルタネータの現行システムではダイオードのIRが大きくなるとレギュレータが誤認識するため、IRを抑制することも重要である。 またオルタネータ用ダイオードにはバッテリー遮断時に発生するロードダンプサージの保護機能も求められる。 そのためJBS構造を採用することで、IR低減とサージ耐量向上を図る。
9 車載向け多機能多出力PMIC用高速12bit A/D変換器の開発 林 秀樹
車載向け多出力、多機能PMIC(Power Management IC)のプラットフォームであるマイクロコントローラユニット、MD6604を開発した。 MD6604は、電圧を監視する12ビット-A/D変換器(Analog/Digital Converter)を19個、搭載する。各々のA/D変換器は変換時間が105nsと高速であり、 他のA/D変換器の動作に干渉することなく任意のタイミングで変換を開始でき、その際、互いの動作による変換精度への影響を受けないように設計されている。 この独立した複数のA/D変換器を持つことにより、MD6604は複数の電源に対して1個のメインCPUと8 個の専用コアを用いて2MHz周期のデジタル処理による リアルタイムな電源制御を実現する。
10 食品照明用LEDの開発 田中 芳憲
政府は「新成長戦略」「エネルギー基本計画」の中で、LEDやレーザーなどSSL照明の占有率目標を、2030年にストック市場で100%化を目指すと発表している。 それを受け、国内照明メーカーは蛍光ランプや水銀ランプ等の既存光源の生産終了を進めている。 その中には、色評価用等の特殊な機能を付加した「光の質」を重視した光源も含まれる。 既存光源の「光の質」に満足していたエンドユーザーにとっては、置き換えても特殊機能を損なわない次世代照明が必須となる。 今回、「光の質」を重視した光源の一つである食品照明用LEDの開発に至る、各種食材の光学的性質からのアプローチを踏まえ報告する。
11 効率99%、5W/ccの三相LLC電流共振型コンバータ 千葉 明輝
青柳 祐輝
高木 一斗
高効率化への性能追求と、仕様や電力拡大のためのモジュラーデザイン性の両立を可能とする新しい三相LLC共振コンバータを提案する。 提案回路は電流平衡や相数切替のための部品追加や特別な制御法を必要としない。 2kW、380Vin/48Vo試作機は良好な電流平衡性能と、相数切替時の良好な過渡応答を示す。 標準的なSJ-MOSFETの使用にもかかわらずピーク全体効率は99.41%であり、幅広い負荷範囲でも効率99%以上を得る。 これによりファンレス、放熱器レスが可能となり、電力密度は5W/ccにも達する。 本稿では、提案回路構成や自動電流平衡の原理、小型・高効率化のための実装上の工夫、実験結果のほか、仕様・電力拡大の応用例も示す。

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