接合部温度TJの計算方法

熱抵抗

以下に、熱抵抗RθJCの概念図を示します。温度の規定位置は、パッケージや製品で異なります。


ここで、
TJ:接合部温度
TC:ケース温度
RθJC:接合部とケース間の熱抵抗

ケース温度から計算する方法

パワーMOSFET/IGBTが動作しているときの損失とケース温度TCの実測値と、データシートの電気的特性に記載されている熱抵抗RθJCから接合部温度TJを推定します。TJは以下の式で計算できます。

TJ = P × RθJC + TC

ここで、
P:パワーMOSFET/IGBTの損失(W)
RθJC:接合部とケース間の熱抵抗(°C/W)
TC:ケース温度(°C)

例として、P = 0.6 W、RθJC = 20 °C/W、TC = 80 °Cの場合、TJは以下の式で計算できます。

TJ = 0.6 × 20 + 80 = 92 (°C)

過渡熱抵抗特性から計算する方法

瞬間的に電力印加した際のTJは、過渡熱抵抗データから推定します。TJは以下の式で計算できます。

TJ = P × rθJC + TC

ここで、
P:パワーMOSFET/IGBTの損失(W)
rθJC:接合部とケース間の過渡熱抵抗(°C/W)
TC:ケース温度(°C)

以下に、過渡熱抵抗特性例を示します。例えば単発の矩形波100 msを印加した場合、rθJCは2 °C/Wと読み取れます。

例えばP = 0.6 W、rθJC = 2 °C/W、TC = 100 °Cの場合、TJは以下の式で計算できます。

TJ = P × 0.6 × 2 + 100 = 101.2 (°C)

重ね合わせの理を使用した計算方法

規則的な方形波の電力損失がパワーMOSFET/IGBTに生じた場合と、不規則な方形波の電力損失がパワーMOSFET/IGBTに生じた場合の接合部温度TJの算出方法を示します。このような電力損失波形の場合、各期間の熱抵抗をデータシートの過渡熱抵抗特性グラフから読み取り、重ね合わせの理を使用した算出方法が、容易で有効です。

連続パルス

(A)に示すように、規則的な方形波の電力損失がパワーMOSFET/IGBTに生じた場合の接合部温度TJの算出方法を示します。全期間の平均電力損失に、2周期分の電力損失が発生したとする計算方法が容易です。
(B)と(C)に示すように、電力損失を近似し、重ね合わせの理を使用することでTJを算出します。

次に、(C)のブロックごとに、接合部温度を算出します。

よって、重ね合わせの理を使用した場合のTJは以下の式で計算できます。


ここで、
TC:ケース温度(°C)
PM:平均電力損失(W)
t1:周期(s)
tP:パルス幅(s)
RθJC:全期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t1+tP):t1+tP期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t1):t1期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(tP):tP期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)

不規則パルス

(A)に示すように、不規則な方形波の電力損失がパワーMOSFET/IGBTに生じた場合の接合部温度TJの算出方法を示します。(B)に示すように、重ね合わせの理を使用し、ブロックごとの接合部温度TJを算出します。


よって、重ね合わせの理を使用した場合のTJは以下の式で計算できます。


ここで、
TC:ケース温度(°C)
P1~P3:各パルスの電力損失(W)
rθJC(t6−t1):t6−t1 期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t6−t2):t6−t2 期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t6−t3):t6−t3 期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t6−t4):t6−t4 期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)
rθJC(t6−t5):t6−t5 期間の接合部とケース温度間の熱抵抗(°C/W)


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